●野菜(3)
 我が家の台所に「大地」がやってきた。

 最初は野菜だけを頼んでいた。
 角田さんが作るものと遜色ない。これには正直愕いた。
 力強い生命力があり、滋養に富み、そして、なにより、ウマイ。高いかというと、そんなことはないと思う。スーパーマーケットなどに出回る力のない野菜たちに比べれば高いが、充分に納得できる価格だし、べらぼうに高い無農薬・有機栽培の店に比べたら、間違いなく安い。もう、非常時でない限り、我が家の畑は大地に頼りきることになった。

 野菜がウマイのなら、他のものもウマイだろう、そう考えるのは自然だが、妻は肉をあまり得意としないし、魚だって海で採れることに変わりないものだからそう違うこともないだろうと、伊勢丹あたりで入手することが多かった。閉店間際に行くと安かったし(笑)。それでも試してみるものだ。ウマイのだ。妻も美味しいと言って肉を食べるようになり、何がこんなに違うんだ?と思うほど魚が違っていた。畜肉は、餌にこだわり、飼育方法にこだわっているので納得できるが、何で魚まで?? 肉も魚も冷凍で届くことが多いが、かなり強力な冷凍庫のようで、解凍してみるとみずみずしさと元気良さが戻ってくる。そのへんにもうまさの秘密はあるのだろう。
 最近知った話だが、肉や魚などの生鮮食料品も薬品で処理されることが多いようなのだ。品質を保ち、流通コストを下げる目的もあるのだろうし、見栄えのためもあるだろう。これが本来持っているはずの味を壊している。そういうものらしい。だから、そういった処理を排除した大地の魚もウマイのだと合点した。
 大地の合い挽き肉と野菜で作ったハンバーグを、ひと一倍ハンバーグにこだわる友人に振る舞った。食べはじめたら、一言も発さず、わき目もふらず、一心不乱に食べつづけ、全てたいらげたところで「マジでうまい」とのたまった(笑)。嬉しいことである。

 牛乳(ウマイ!)、和菓子(ウマイ!)、チョコレート(ウマイ!)、クッキー(ウマイ!)、米(ウマイ!)、水(ウマイ!)といった口に入るものはもちろん、合成界面活性剤をつかわない洗剤・石鹸類、肌着、ふとん、寝ござ、磁器に切り子ガラスに漆塗り……。注文する品物の範囲が増えてきているのは当然の成り行きだ。生活雑貨なんて、店で手に入れようとすると探し回らなくてはならないような安全・高品質なものが、間違いなく安く手にはいる。我が家の生活は、そうして、大部分を大地に任せることになってしまった。

 大地は生産者にも厳しい(LINK)。約束を守らなかった業者は、消費者にその理由を開示し即座に取引をやめてしまう。意志と誠意を持った生産者のみが大地に供給していることは、疑う余地もない。妻は大地の集まりにも行ったことがあるが、志の高い農家のおっちゃんと仲良くなって帰ってきた。そして、大量の茄子を送り届けてくれた(笑)。
 我が家は、外食など滅多にしない。理由は「高いから」だが、安くても出自の知れた食材を使っておらず、ウマイところがないから、というのも嘘ではない。高くてもウマければ心豊かになるが、高くてマズイものは、許し難い!
 食事に関して言えば、妻の作る、大地の食材を使った料理が世界一だと思っている。今日の弁当もウマかった。なんでただの「ちくわ」がこんなにウマイんだ?(笑)


 そして、この「大地」は我が家を救った角田さんが教えてくれたに違いない。謹んでご冥福をお祈りする。

25/December/2000 (Christmas, and in1954 Annie Lennox was born!)

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