●オーブリー
 妻は化学物質過敏症である。研究もそう進んでおらず、詳しいことはわからないらしいが、アレルギーの一種のようだ。残留農薬があったり流通のための薬品処理が施された食物を食べると、全身に発疹する。皮膚科で「農薬を飲んで自殺した人のような発疹」だといわれたというから、大変なものだ。
 そんな状態なので、基礎化粧品にも苦労している。学生時代、友達の家で勧められて使った基礎化粧品で顔が陽焼け後の肌のように赤くなり、それ以来肌のトラブルが多くなってしまった。比較的肌に合うシャネルの基礎化粧品、例の「大地」が発売している「オリザレート」というシリーズのものや、太陽油脂(LINK)のパックスナチュロン・シリーズを使っていたりした。これらも悪くなく、肌がトラブることもなかったのだが、「肌の調子が頗るイイ」ということがあるわけでもなく「こんなものだろう」と淡々と使っていた。

 ある日、古本屋でとある本を購入してきた。自然派化粧品を紹介したその本は、アメリカのオーブリー・オーガニクス(LINK)が開発・販売しているものを扱っていて、さも良さそうなことが書いてある。言わば自画自賛みたいなものなので、こちらも眉にたっぷりとつばをつけて読み進んだ。通常の化粧品店で扱われている「化学的な」化粧品と、オーブリーが扱う「自然由来の」化粧品を対比し、化学成分の問題点を浮き彫りにして自然由来のものの正しさを切々と訴えかけている。あまりにもいいことばかり書いてあるので、「ンなことはないよな〜」と思いつつも興味が湧いてきた。「通販か自然食品店」でしか扱っていないとのことで、どうすれば買えるのかをネットで調べたら、日本ではミトク(LINK)という会社が扱っていて、実は歩いて数分のところにある自然食料品店「野良」(LINK)で店頭売りしていることがわかった。早速行って探してみた。

 「試しに」というのも賭けには違いない。値段もブランド品ほど高くはないものの、スーパーで安売りをするようなものの数倍はする。オーブリーのラインナップは基本的にタイプ別で、ヘアケアだったらオイリー/ノーマル/ドライorダメージの3つのラインがある。店に行ってみたら折よく小さなボトルに入ったヘアケア用の無料サンプルが置いてあった。妻用にダメージの、ボク用にノーマルのサンプルをもらってきて試した。
 ヘアケア製品についても地肌や髪に優しいとされる合成界面活性剤を使ったシャンプーもずいぶん使っていたし、いわゆる石鹸シャンプー(これは太陽油脂のもの)もここ数年使い続けていた。それなりに良かったのだが、合成界面活性剤は化学物質過敏症の敵である。石鹸シャンプーも悪くはないようだったが髪にはそれほど優しいわけではなかった。

 サンプルの使い心地に妻は大いに満足したようで、早速購入して使い始めた。
 ボクも使ったのだが、シャンプーは洗い心地のさっぱりした快適なもので、ナチュロンに勝っていたが、驚くべきはコンディショナー(GBPヘアコンディショナー)の方で、何と表現したらいいのだろうか、髪が「飲む」のだ。たっぷり付けても、髪の内部に吸い込まれるようにして浸透する。こんな感触のリンス/コンディショナーは初めてだった。洗い上がりも自然で、栄養をもらった髪が枝毛や切れ毛を作ろうとしないような感覚。「髪はきれいだが毛先がパサパサ」な女性を多く目にするが、GBPを使えばあれとは全く違った状態になるはずだ。早速購入することになる(今のわが家のバスルーム・洗面所を見ると笑ってしまう。スタイリング剤も含めてオーブリーのヘアケア製品の全てがあったりする)。

 こうなったらいろいろと試したくなるのが人情。ずっと懸案のスキンケアの方に手を出した(2002年から使い始めたのだが、2003年春になって、スキンケアのラインが一新されて、ドライ/ドライ〜ノーマル/ノーマル/オイリー〜ノーマル/オイリー/ダメージの6ラインになった)。

 洗顔料/化粧水/乳液の3つが基礎化粧品だ。女性は良くご存知だろうが、男性は男性用の化粧水である「アフターシェーブローション」以外はあまり馴染みがないだろう。他に顔のパック剤なども基礎化粧品に入る。ボクも基本的に顔は石鹸で洗いっぱなしだったのだが、どうもそれでは具合が良くないようで、吹き出物が頻発していた。それに痛いのもかなわないので、妻の勧めに素直に従って、ナチュロンの化粧水だけは使っていた。もちろんそれでもずいぶん良かったのだが、妻が買ってきたオーブリーを使い始めたら、見事に嵌まってしまった。肌の保湿のためには洗顔後、すぐに化粧水で水分を補い、またすぐに乳液を塗って水分の蒸発を防ぐ必要があるという。妻もオーブリーを1セット購入して嬉々として使っている。化粧水はダメージ用の以外はアルコールを使っているので、余分な皮脂を落し、清潔に保つ。天然の保湿成分も含まれているので、もちろん肌にイイ。化学合成物質が含まれていないということが、如何に正しいかがわかる。ボクは乳液のべた付きが苦手で、クリニークのものぐらいしか使ったことはなかったのだが、オーブリーはよかった。当然のことながら香料は使っていないので、香りも妙にフェミニンなところはなく、都合が良かった。
 もちろん妻も大満足でイキイキと洗顔している。

 そして妻はなんだかんだとオーブリーに手を出している。入浴剤も気持ちが良かった。店に置いていないメイク用品まで注文する始末。
 どんどんわが家に浸透してきた白いボトルにグリーンのキャップのオーブリーだが、使いにくい部分は少なくない。パッケージデザインにお金を使っていない(だから安い)ため、同じ大きさ・形のボトルがズラズラ並ぶことになる。新しいスキンケアラインはボトルの絵柄が色分けされたので少しはいいが、それ以外はボトルにグリーン一色の絵柄と統一感のないロゴが印刷されているのみなのだ。正直、間違えやすい。そして、天然のものだけで作られているので、乳化剤が含まれていない。どういうことかというと、成分に水性のものと油性のものが含まれている場合、分離してしまうのだ。使う前によ〜く振ってやる必要がある。それから、開封前なら1年以上持つが、開封したら3ケ月の命である。防腐剤の役目をするグレープフルーツエキスが入っているが、それでも限度がある。実際は3ケ月以上持つが、開封して使わないでいると、状態が変になる。そうなったものは当然使うべきではない。

 そうして、心優しく正しい生産者、メーカーに救われながら、化学物質過敏症で都会暮らしであるのにそこそこ元気に生きていっている夫婦なのであった。


15/July/2003 (in 1966 Nagase Masatoshi was born!)

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